【生物】ヒトは古細菌だった!?
衝撃的なタイトルをつけてみました。
原核細胞という概念がわかる方ならば、何言ってんだこいつ?となるでしょう。
ヒトは真核生物。
対して、古細菌は原核生物。
あるいは、3ドメイン説を知っている方でも、何言ってんだこいつ?となるでしょう。
ヒトは真核生物ドメイン。
古細菌は古細菌ドメイン。
別々の系統に属します。
しかし、ヒトを古細菌とする学説も存在するのです!
つまり、真核生物は古細菌であるというもの。
その名も、「エオサイト説」。
今回はこの「エオサイト説」についてです。
エオサイト説とは
1984年、James A. Lakeが提唱した学説です。
Lakeは、原核生物と真核生物のリボソームの形状を比較して気づきます。
好熱硫黄代謝古細菌と真核生物が近縁なのではないかと。
その後、rRNAの系統解析の研究も行ったのですが、
この2つの論文では、3ドメイン説を覆せませんでした。
しかし1992年、LakeはM.C.Riveraと共に、確たる証拠を発見します。
それは、EF-1というリボソームの伸長因子の変異でした。
このEF-1(細菌ではEF-Tu)は、細菌、古細菌、真核生物に共通して見られるのですが、真核生物とクレン古細菌らにだけ、同様の変異が見られたのです。
GEFEAGISKDGという、アミノ酸残基の挿入です。
真核生物とクレン古細菌らにだけ、同様の変異が見られる。
これをどう説明しましょうか。
右は、3ドメイン説の系統樹です。
最終共通祖先(LUCA)から、まず細菌が分かれ、その後に古細菌と真核生物に分かれたという学説ですね。
この系統樹にEF-1の変異が加わった時期(オレンジ線)を加えてみましょう。
同じ変異が2箇所で別々に起きた。
偶然そのようなことが起きたのでしょうか?
では、3ドメイン説にこだわらなければどうでしょう?
こんな感じの系統樹にすれば、挿入は一回で済みます。
これが、エオサイト説です!
文章で説明します。
ます、最終共通祖先(LUCA)から、細菌が分かれます。
その後にユーリ古細菌が分かれます。
そして、クレン古細菌や真核生物に分かれた、というもの。
この系統樹を見れば、タイトルの意味がおわかり頂けると思います。
真核生物は古細菌である。
転じて、ヒトは古細菌である、と。
エオサイト説のその後
1992年の論文から約30年。
古細菌の研究もかなり進み、また別の説が提唱されています。
2017年には次のような分類が系統解析の結果から発表されています。
・古細菌
・アスガルド古細菌
・
・オーディーン古細菌
・
・トール古細菌
・ロキ古細菌
・
・ヘイムダル古細菌
・真核生物
・
・
・バチ古細菌
・
・タウム古細菌
・アイグ古細菌
・
・クレン古細菌
・コル古細菌
この系統樹で見ると、真核生物はアスガルド古細菌に属し、ヘイムダル古細菌と近縁ということになります。
余談ですが、オーディーンやアスガルド、トール。
どこかで聞いたことありませんか?
実は、古細菌の名前は北欧神話から採られるという慣例が続いているんです!
3ドメイン説とエオサイト説、どちらが正しいのか
ここまでは、エオサイト説を支持する研究を見てきました。
しかし、これには異論も存在します。
というより、恐らくエオサイト説を支持する立場は少数です。
2023年現在においては、上記の論文を持ってしても3ドメイン説が主流となっています。
なぜか?
それは、3ドメイン説を支持する証拠も多いからです。
16S rRNAの系統解析やタンパク質遺伝子の解析では、3ドメイン説が支持されています。
しかし一方で、上記のようにエオサイト説を支持する研究も次々と発表されています。
果たしてどちらが正しいのか。
それは現状、わかりません。
そんな中、また新たな学説も提唱されているのですが、それはまだ別の回で紹介したいと思います。
それでは今回はこの辺で(^.^)/~~~
※日本の教科書では、3ドメイン説を採用しています。
エオサイト説をテストで書いて不正解となっても、責任は取れません。
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