国立大学のデメリット

2023年12月4日入試対策,受験勉強

日本の大学は主に3つに分類することができます。

・国立大学
・公立大学
・私立大学

そして、全体的な傾向で見ると、国立大学の方が現在の日本では人気であると言えるでしょう。

それには様々なメリットがあるからですが、今回お話したいのは、そんな国立大学にあるデメリットについてです。

国立大学とは

国が設置した大学。国立学校設置法・同法施行規則、その他の規程によって設置・運営されたが、平成15年(2003)国立大学法人法の施行により、現在では国立大学法人が設置・運営をする。全国に86校ある(令和4年現在)。

国立大学(こくりつだいがく)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

だ、そうです。

更に細分化すると、

旧帝大
東京大学、京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学

専門系大学
帯広畜産大学、東京農工大学、東京藝術大学、東京工業大学、東京海洋大学etc…..

地方国立大学(駅弁大学)
埼玉大学、弘前大学、山梨大学、琉球大学、愛媛大学、長崎大学etc…..

といったように分けられるでしょうか。
もちろん、財政規模やその役割など他の分け方も存在します。

国立大学に行くメリット

学費

これは一番のメリットであると思います。

文科省の資料によると、2021年時点での授業料の平均が

国立大学…53万5800円 (国立大学等の授業料その他の費用に関する省令により一律)
公立大学…53万6363円
私立大学…93万0943円

実に40万円も違います。

この差は大きいです。

ST比

ST比、Student-Teacher比率。
大学の教員1人当たりの学生数を表すものです。

言い換えれば、このST比が小さいほど、手厚い指導が受けられると言えるでしょう。

少し古いデータですが、朝日新聞の調査を見ると

国立大学…12.5人
公立大学…13.8人
私立大学…24.8人

圧倒的に国公立大学の方がST比が小さいです。

科研費

理系の学生にとっては、一番重視すべきポイントとも言えるでしょう。

2021年の文部科学省のデータを見ると、

科研費採択率
国立大学…31.2%
公立大学…25.3%
私立大学…24.4%

科研費配分額割合
国立大学…63.1%
公立大学…5.5%
私立大学…19.0%

大学の数を考えれば、国立大学の方がより多くの科研費をゲットできていることがわかります。
ただ、東京大学や京都大学の占める割合が大きいことには気をつけねばなりません。

デメリット

では、デメリットはどうでしょう。

軽くネットで検索をかけてみると、

・受験の難易度が高い
・設備が古い

といったものが出てきました。

ただ、受験の難易度なんてものは大学ごとですし、ぶっちゃけ勉強すれば良い話です。
設備に関しても、大学によって差が大きいです。
何より注意しなければならないのは、校舎の新しさと実験設備の新しさなどは別物ということ。

では、国立大学にデメリットはないのでしょうか?

私はそうは思いません。
実は、国立大学と私立大学の間にはそれはそれは大きな違いがあるのです。

国立大学に民法は適用されるか?

民法とは、

市民生活における市民相互の関係、つまり財産関係(売買・賃貸借・不法行為など)と家族関係(夫婦・親子・相続など)を規律する法をいう。

民法(みんぽう)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

例えば、民法の四条には

第四条 年齢十八歳をもって、成年とする。

民法 | e-Gov法令検索

民法の五百二十二条には

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

民法 | e-Gov法令検索

こんな感じのことが定められているのが民法です。

そして、今回特に注目したいのが、七百九条。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 | e-Gov法令検索

損害賠償について定めたところです。

交通事故に遭って怪我を負った時、加害側が賠償をしなければならない根拠はこの条文です。

さて、ここで一つのケースを考えてみましょう。

あなたは国立大学の4年生です。
卒業論文の執筆をしていました。
しかし、指導教員からアカデミックハラスメントを受け、卒業論文を書くことができず、卒業することができませんでした。
あなたは、国立大学(法人)と指導教員相手に裁判を起こし、損害賠償を求めました。

さてこの場合、あなたは損害賠償を受け取れるでしょうか?

実際の判例があります。

簡単に言うと、国立大学法人は国家賠償法が適用されるので、国立大学法人は賠償責任を負うが、教員個人は賠償責任を追わない。
ということです。

では、国家賠償法とは何でしょう。

国や公共団体の賠償責任について規定した法律。昭和22年(1947)制定。国や公共団体などの公権力を行使する公務員が職務を行う際に故意または過失により違法に他人に損害を与えたときや、道路・河川などの公の営造物の設置・管理の瑕疵により他人が損害を受けたときに、国や公共団体が負う賠償責任について定めている。

国家賠償法(こっかばいしょうほう)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

簡単に言うと、公務員が故意や過失によって損害を与えた時、公務員ではなく国や公共団体がその賠償を行うよ。
という法律です。

公務員が公権力を行使する職務を行うにあたって故意または過失により違法に他人に損害を加えたとき、国または公共団体が賠償責任を負うと定める。これは、公務員の不法行為を前提として、国または公共団体が被害者に対して責任を負う代位責任である。公務員自身は、故意または重過失があるときには、国または公共団体に弁償しなければならないが、被害者に対しては直接には賠償責任を負担しないとするのが通説判例である。公権力の行使によらない公務員の加害行為については、国または公共団体は民法第715条の使用者責任を負い、公務員個人は民法第709条により被害者に対して責任を負う。公権力の行使とはもともと命令強制作用と解されてきたが、近時は教育、行政指導、公表などの非権力的公行政作用も含むとされている。

国家賠償法(こっかばいしょうほう)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

ということで、国立大学の教職員からハラスメントを始めとする損害を受けた時、被害者は加害者ではなく、その加害者が属する国立大学に賠償を求めなければなりません。(公権力の行使に当たる場合)

つまり何が言いたいかというと、教職員個人の賠償責任を問うことはできないということです。
そして、もし裁判を起こす場合、戦う相手は国か公共団体(国立大学法人)になるということ。

ここが私立大学との大きな違いの一つです。

国家賠償法に基づく賠償請求は「国家賠償請求」と呼ばれます。
そして、この「国家賠償請求」というワードを検索にかけてみると

国家賠償訴訟では、90パーセント以上が国側の全面勝訴だといわれています。

国家賠償請求・訴訟とは | 土佐堀通り法律事務所 (tosabori-dori.com)

民間人が国などの公権力を相手におこす行政訴訟で原告が勝訴することは極めて難しい。

第59回 行政訴訟での勝利は至難の業 (potato.ne.jp)

もちろん、国家賠償請求訴訟は、国立大学を被告とするものだけではありません。
むしろ、国立大学を被告とする訴訟はとても少ないです。

また、訴訟は一つ一つの事案に当然のことながら差があり、上記のような傾向分析は無意味であると言うこともできます。

実際に、先に紹介したアカハラ訴訟では、国立大学の賠償責任が認められています。

国立大学に行くと、国家賠償法の適用を受ける可能性があり、
私立大学ではそのようなことはない。

この違いをどう捉えるのかは、皆様次第です。

※執筆者は法律に関しては素人です。法的に間違っていることを書いている可能性もあります。
ご了承下さい。
また、間違いがありましたら指摘して頂けますと幸いです。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。