【生物】はたらく細胞・血球細胞の起源
血球細胞。あるいは血液細胞。
血液中に浮遊している細胞で、赤血球、白血球、血小板に大別されるが、白血球はさらに多くの型の血球の総称である。ヒトでは1立方ミリメートル中に、赤血球数は男500万、女450万、白血球は6000~8000、血小板は25万~35万である。
血球(けっきゅう)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)
最近だとこっちの方がイメージが湧きやすいでしょうか?
はたらく細胞!
この漫画、アニメに出てくるキャラクターの多くは血球細胞です。
今回は、これら血球細胞は一体どこから来たのかという話について。
血球細胞の種類
それこそ、はたらく細胞を読んでもらった方が圧倒的に理解が深まると思いますが、
高校生物・生物基礎で学び、共通テストで問われる可能性のある細胞についてざっと紹介していきます。
赤血球
はたらく細胞でいうところの主人公。
特徴:円盤状で無核
直径:6~9μm
数:男性で500万個/m㎥、女性で450万個/m㎥
生成場所:骨髄、胎児では肝臓・脾臓
存在場所:血管内
寿命:120日
主な働き:酸素の運搬
ヘモグロビンと関連して問われることが多いでしょうか。
ヘモグロビン
・赤血球に含まれるタンパク質
・酸素濃度が高く、二酸化炭素濃度が低い場所で酸素と結合
・酸素と結合すると酸素ヘモグロビン(HbO2)になる
・酸素ヘモグロビンは、酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い場所で酸素を離す
そんな赤血球をもつ生物としては、
・ヒトを含む多くの脊椎動物
・一部の例外的な無脊椎動物(ホシムシやアカガイ)
が挙げられます。
では、赤血球をもたない生物はどのようにして酸素を体中に運搬しているのかというと、ヘモグロビンなどが直接血漿中に溶け込むことで、酸素を供給しています。
系統樹から考えると、赤血球が誕生したのは比較的後ろの年代と考えられるでしょうか。
加えて、鎌状赤血球貧血症も共通テストでは問われる可能性があります。
DNAの変異が形質に影響を及ぼす一例です。
これは、ヘモグロビンのβ鎖の1か所でアデニンがチミンに置換することで起こるものです。
アミノ酸でいうと、6番目のアミノ酸がグルタミン酸からバリンに変わってしまっています。
この病気は重い貧血症状を引き起こすことで知られているのですが、一方で、マラリアに耐性をもつことにもなります。
つまり、マラリアが流行する地域では、この変異による貧血よりも、この変異によるマラリア耐性が生存に有利である。言い換えると自然選択において有利である可能性がある。
と考えられています。
いわば、進化の一例と言えるものかもしれません。
ちなみに、この病気はいわゆる遺伝病で、対症療法を行うしか無かったのですが、2021年に治療法が発表されました!
この話もまたおいおい。。。
白血球
白血球という言葉は総称で、実際は更に細分化されるのですが、高校生物レベルではそこまで詳細に触れないので、ざっと流します。
特徴:アメーバ運動
直径:6~20μm
数:6000~8000個/m㎥
生成場所:骨髄
存在場所:血管内・外
寿命:10~20日
主な働き:食作用、感染防御
免疫に関わる細胞です。
ヒトを含む多くの脊椎動物に見られる他、無脊椎動物においても比較的広く見られます。
タコやカイメンにも見られるほど。
一応、大雑把に細かな分類も。
実際にはまだまだ種類がありますが。。。
好中球
細菌などを食べてくれます。
好酸球
寄生虫に感染すると増えます(戦ってくれている?)。
NK細胞
リンパ球の一種。
自然免疫で働き、腫瘍細胞や感染細胞を殺します。
ヘルパーT細胞
リンパ球の一種。
抗原の情報を認識し、キラーT細胞やB細胞などを活性化させます。
キラーT細胞
リンパ球の一種。
ヘルパーT細胞によって活性化し、腫瘍細胞や感染細胞を殺します。
B細胞
リンパ球の一種。抗体産生細胞です。
マクロファージ
抗原提示細胞であり、また貪食を行う。
樹状細胞
抗原提示細胞。T細胞の活性化に大きく関与。
血小板(栓球)
みんな大好き血小板。
特徴:不定形、無核
直径:2~3μm
数:15万~35万個/m㎥
生成場所:骨髄
存在場所:血管内
寿命:4~5日
主な働き:血液凝固
血液凝固に関与する細胞です。
出血すると、血小板が集まり、血管の破れた部分を塞ぎます。
そして、血小板がカルシウムイオンを始めとする血液凝固因子を放出することで、血漿中のプロトロンビンがトロンビンになり、トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンにします。
このフィブリンが血球を絡め取ることで血餅ができ、傷口が塞がれます。
ちなみに、血小板は一般に哺乳類のみ存在します。
じゃあ他の脊椎生物はどうやって血を止めているのか?
これには栓球という細胞が関与しています。
実は、血小板もこの栓球の一種。
栓球のうち、小型で無核のものを血小板と呼んでいるのです。
栓球は脊椎動物の他、一部の無脊椎動物にも存在しています。
血球細胞の分化
ここまでざっと血球細胞を見てきましたが、赤血球、白血球、血小板という血球細胞は、元を辿ると同じ細胞に行き着きます。
それは、造血幹細胞。
骨髄に存在する、すべての血球細胞の元となる細胞です。
白血病の治療などでよく耳にする、骨髄移植。
これはこの造血幹細胞を移植することです。
つまり、正常な造血幹細胞を移植することで、レシピエントの体内で正常な血球細胞が造り出され、病気が治るということ。

こんな風に分化します。
血球細胞の起源
しかし、今回考えたいのは、生体内における血球細胞の起源ではなく、進化における血球細胞の起源。
生物はどのようにして血球細胞というメカニズムを手に入れたのかという点。
ここからは、以下の京都大学の研究グループの論文から引用させて頂きます。
※がついた部分は、引用ではなく注記や個人の解釈です。
まず、ここまでざっと述べてきた血球細胞の生物の分布を見てみましょう。
この図から、貪食細胞、つまりマクロファージが系統樹の根本に近い生物群でも見られることがわかります。
※余談ですが、この図では、貪食細胞(マクロファージ、好中球など)と書いている一方、貪食細胞と顆粒球を別の項目で扱っています。一方で、好中球は顆粒球に分類されます。
貪食細胞という単語には、広義には=食細胞、狭義には=マクロファージという意味があるので、図の項目における貪食細胞はマクロファージを指すものと解釈しました。
ここで、マクロファージが血球細胞の起源に近いという仮説を立てることができます。
研究グループは、いくつかの生物のアミノ酸を指定する遺伝子のホモログ(相同遺伝子)を探すことで、血球細胞の起源を探ろうとしました。
その結果、
・マウス、ホヤ、カイメンのマクロファージが互いに類似していること
・それらがカプサスポラにも類似していること
が明らかとなりました。
※カプサスポラ
Capsaspora owczarzaki
アメーバ状の原生生物。
多細胞生物と最も近縁な単細胞生物の一つ。
次いで、マクロファージとカプサスポラに共通して高発現している遺伝子を探し、更に転写因子に絞って検索したところ
CEBPα
という遺伝子に行き着きました。
さらに、カタユウレイボヤの血液細胞の遺伝子発現量を調べたところ
CEBPαがマクロファージが他の血液細胞と比べて高く発現していることがわかり、
マウスのB前駆細胞や巨核球に4生物種のCEBPαを発現させて細胞の変化を調べたところ、
マクロファージに転換しました。
※B前駆細胞はB細胞の前駆細胞。巨核球は血小板の前駆細胞。
一方で、マクロファージは、造血幹細胞→単芽球→単球→マクロファージと分化する。
本来ならば、B前駆細胞や巨核球はマクロファージには分化しないはず。
このことから、CEBPαの機能が単細胞生物から脊椎動物に至るまで保存されていることが明らかとなりました。
最後に、これら血球細胞がマクロファージにならないようCEBPαが抑制される仕組みとして、ポリコーム複合体が関与していることがわかりました。
このポリコーム複合体の構成タンパクである Ring1A と Ring1B を欠失させてポリコーム複合体の機能を失わせると、赤血球、巨核球、T 細胞、B 細胞においてCEBPαの発現が上昇し、マクロファージへと転換。
さらに、このマクロファージは白血病細胞様に変化することも発見し、この白血病様のマクロファ
ージは、正常な細胞よりカプサスポラへの類似性が高いことも確認されたそうです。
この研究から考えられること
腫瘍細胞と単細胞生物(カプサスポラ)の類似性が高い。
つまり、腫瘍細胞は先祖返りした細胞なのではないか?という考えも成り立つでしょうか。
この研究は、血液疾患の治療が最終目的にある研究のようです。
しかし、私の興味はそちらよりも、血球細胞の起源を単細胞生物まで辿ることができたという点に向きました。
・マクロファージとカプサスポラの類似性
・共通して高発現している遺伝子CEBPα
要は、血球細胞と単細胞生物が似ているということ。
我々の祖先生物があるとき、CEBPαを発現することで、単細胞生物時代の古い形質が引き継がれた細胞が体内に生じ、それが血球細胞となったという仮説が成り立つでしょうか。
個人的には、マクロファージと単細胞生物が似ているという話を聞くと、共生説に思考が引っ張られてしまいますが(苦笑)。
それでは、今日はこの辺で。(^.^)/~~~
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