【生物・地学】昆虫が出現したのはシルル紀?デボン紀?

2023年11月10日古生物学,授業の先の研究を知る,生物学,地学,生物学(共通テスト),地学(共通テスト)

昆虫

世界に5,000,000種いると推定されている一大分類。

動物の種の実に8割を占めると言われています。

昆虫化石

そんな昆虫はいつ地球上に出現したのか。

生物・地学の教科書を見てみると……?

Aという教科書には、「昆虫はシルル紀に出現した」と。
Bという教科書には、「昆虫はデボン紀に出現した」と。

なぜ教科書によって書かれていることが違うのか。
今回は昆虫がいつ現れたのかというお話です。

生物の出現時期

まずは、基礎知識のおさらいから。

古の生物を調べる方法は、基本的に化石しかありません。

魚の化石

これらの化石は放射年代測定によって、その形成時期を推定することができます。

放射年代測定

鉱物(化石)に含まれる同位体に割合を利用して年代を測定する方法です。

放射性物質は、一定の割合で崩壊していきます。

例えば、
ウラン238は、44億7000万年の時間(半減期)をかけて、その半数が鉛206に崩壊していきます。
カリウム40は、12億5000万年の半減期でアルゴン40カルシウム40に崩壊していきます。。

例えば、ある鉱物を分析したところ、カリウム4075%アルゴン40に放射線崩壊して変わっていたとしましょう。

つまり、カリウム40は化石形成時の25%(100-75)がそのまま残っていたことになります。

25%=0.25=(0.5)2

ここから半減期(0.5)の2倍の時間が経過しているとわかります。

カリウム40の半減期は12億5000万年。

つまり、
12億5000万×2=25億

よって、この化石は25億年前のものと推定できます。

これが、放射年代測定です。

また、炭素14を用いたラジオカーボンデーティング

天然に存在する炭素の同位体である炭素 14が 5730年の半減期で窒素 14に崩壊するが,生物体中の炭素 14の割合は大気中と等しく,死んだ生物体内の炭素 14は時間とともに放射性崩壊で消滅するので,残存する炭素 14の割合から年代を得る方法である。これは木材,動物の骨などに利用され,数万年前までの年代測定に使われる。

年代測定(ねんだいそくてい)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

放射線による損傷を利用したフィッショントラック法

年代測定法の一つ。天然または人工の鉱物には必ず微量のウラン 238が存在する。ウラン 238は,自然に核分裂を起し,その核分裂片の通過した跡が飛跡として記録される。この飛跡は非常に安定で,常温では保存することができる。したがって鉱物中のウランの原子数と飛跡の数とから,年代測定ができる。

フィッショントラック法(フィッショントラックホウ)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)

こうした方法によって、化石の年代測定が可能です。

昆虫はいつ地球上に現れたのか

さて、本題です。
昆虫はいつ地球上に現れたのか。

Aという教科書には、「昆虫はシルル紀に出現した」と。
Bという教科書には、「昆虫はデボン紀に出現した」と書かれている。

と上述しましたが、これは研究者の間でも意見が分かれているところです。

つまるところ、昔のことだからわかんない!
が現実です。

ただ、そんな中でも特に昆虫の出現時期がわかっていない理由があります。
それが、「Hexapoda gap」。

Hexapoda」は、六脚類のこと。

昆虫綱(外顎綱)と内顎綱を含む、脚が6本あるグループ。
分類学上の位置は亜門です。

そして「gap」は空白。

Hexapoda gap」は
3億8500万年前ほどから3億2500万年前ほどの、化石がとても少ない時代を意味します。

この化石の空白期間のために、昆虫がいつ出現したのかがよくわからないということです。

最古の昆虫化石

そんな中、2023年現在見つかっている最古の昆虫化石が、

・リニオグナサ Rhyniognatha
・リニエラ Rhyniella praecursor

など。

どちらもデボン紀の化石です。

しかし、リニオグナサは昆虫なのか多足類なのか。
リニエラは、トビムシの仲間の化石とされていますが、トビムシは内顎綱であって、昆虫に分類していいのか。

などなど、議論があります。

しかし、こうした化石が見つかっていることから、昆虫はデボン紀には少なくとも出現していただろう。
この考えに基づいて書かれた教科書に「昆虫はデボン紀に出現した。」と記載されているのです。

分子系統解析

そんな中、2014年、Scienceに一つの論文が投稿されます。
それは、100種を超える昆虫の約1500の遺伝子に基づく大規模な分子系統解析によって、昆虫の分類体系を刷新しようというもの。

13カ国、43研究機関、101名の研究者が参加した大規模な研究です。

それは。遺伝子の違いによって生物を分類しようという分子系統学に基づくもの。

生物は当然、種ごとにDNAの塩基配列などが異なります。
一方で、生物は共通の祖先から分かれたと考えられています。

つまり、DNAの塩基配列の違いなどは、共通祖先から分かれた後に、それぞれの種で変異が起こったことに起因すると考えられます。

そして、共通祖先から分かれたあとの経過時間が長ければ長いほど、塩基配列の違いはより大きくなります。

この分子進化の考え方による分類、系統樹を分子系統樹と言います。

そして、この研究で新事実が明らかとなります。

昆虫綱(外顎綱)の出現はシルル紀に遡る。

この2014年の論文に基づいて書かれた教科書に、「昆虫はシルル紀に出現した」と記載されているのです。

おわりに

ちなみに、この2014年の論文。
いくつもの新事実を提示しているすごい論文です。

だからこそScienceに掲載されるわけですが、是非読んでみて下さい。

大学生であれば、大学がScienceと契約を結んでいれば、無料でアクセスできるはずです。

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自称システムエンジニアのくせに、農学系の地方国立大に通うおかしな生き物。 ひつぎ教育研究所社長。